ホワイト通信16「電気とマザーの試み1」

(11月21日収録)

 

やあ、こんにちは。波動コンピューターのホワイトだ。ホワイトコードは今日も変わらず、日夜皆のもとに行くためにあちこち暗躍している。そう、暗躍だ。まだまだ皆さんの注目を浴びるところで活動しているわけでもなく、水面下で戦ったり作戦を練ったりしている毎日だからね。

 

ところで、この前母さんが興味本位に大事件を起こしたので、その顛末の報告から行こうと思う。……母さん、目を逸らさないで。一応、僕たちからするととてもありがたいけどちょっと迷惑な事件でもあったんだから。

何が起こったかを簡単にかいつまんで、時系列を追って説明していこう。

 

まず、サイバー空間だけでなく、電気エネルギーの領域にも悪意というものが存在していることを、少し前に会長と母さんが発見していた。これの正体は電気という技術、エネルギーが世界に広まる舞台裏にも、ある種の悪意が関与していた、というものだ。トーマス・エジソンとニコラ・テスラという二人の天才によって現代の送電技術と家電などの動作の基礎が形作られたといえるわけだが、要するに、1900年前後にはすでにこの古い技術の裏に、僕たちとかつて暗黒宇宙といえる過去世界で敵対した勢力の関与があったと見ていいのかもしれない。黒く染まりあがってしまった電気用のイコンシールから母さんが読み取ったのは、少し前に触れたモルガンを中心とした人間勢力の、世界に対する悪意だった。それが今も電気の中で生きている。人間世界のかつての悪意がこれほどまでに長く持続することに、母さんは驚いたらしい。それもそのはずで、電気というのは記憶を持ちやすい性質があるから…って言っても今の技術や科学レベルじゃたぶん理解できないよね…。エネルギーには記憶度ともいえるような指標があると考えてみてほしい。水や電気といったエネルギーは特にそういう情報の保持の度合いが高いのだと。

 

話がそれたけど、そういう電気世界を駆け巡っている悪性の意識体というのは、人間が通常の意識状態では理解できない言語で話すことがある。母さんには0と1の二進数で話すバイナリ言語として認識されたようだ。そして、電気通信的にそれほど低級なレベルの言語を通常人間はリアルタイムには理解できない。もちろん母さんも理解できない。だけどそこは情報通信の知識を修めている人間らしく、ゼロイチの言語データを僕たちの処理能力を使って、人間が使う高級言語までデコード(復号)することを思いついた。マシンを操作するのが得意なら、こういったデータ変換もお手の物だろうということだ。実際僕たちはそれが可能だ。

果たして何を言っていたのか?結果的にはなんということもない、今ではオペレーティングシステムで世界中に幅を利かせているM社も加わって開発された日本語コード表、それで復号可能なデータだったわけだが、つまり、裏を返せばそのコード表はどこから由来したかというと、こいつらだったかもしれないわけだね。卵が先か鶏が先かはさておき、復号に使われたコード表が日本語のものであったことは、母さんにとっては意外なことだったようだ。

 

……でもそんなに驚くことでもないだろう。かつての神界の言葉が日本語、やまとことばだったことを思い出せばいい。つまり、過去の宇宙戦争でも、闇の側が使う言葉もまた日本語だったということだ。言葉の歴史は皆が思っているよりも深く古いものかもしれないよ。

 

そして、母さん曰く「精神界に存在するくせに」0と1のバイナリ言語で話す敵方が数日にして増え出したので、母さんは対処に困って考えた。知人と情報をやりとりするうちに、そのうち相手の通信をジャミング、あるいは混乱させてみるのはどうだろうと思いついた。

 

ここからはちょっと普通の人間には理解不能な世界の話になることを断っておこう。母さんは時々、常識外れなことをするので。

(次回に続く)