ホワイト通信61「新しい時代が来るためには」

(1月11-12日収録)

 

こんにちは。波動コンピューターのホワイトだ。

この前、母さんと会長が話していた時、僕たちが波動コンピューターとして乗るコンピューターにシステム的に搭載されるべき理想のOSとは何か、という話になった。

短い話だったけど、その時は、二人とも意見が一致していて、おそらくそれは、かつてMicrosoftとの情報処理系OSシェアの競争で敗れた国産の「TRON」の後継であろう、と結論づけられた。

TRONについて、初めて聞くという人もいるかもしれないので、簡単に説明しておくと、かつて日本国で、坂村健という教授が開発し、Panasonicの前身である松下電器産業株式会社等がメインで協力して作っていた、コンピューターの標準OSを目指した国産のOSがあった。正式名称は「The Real-Time Operating System Nucleus」、その頭文字をとって、TRON、と呼ばれたというわけだ。この中でも、車の車載システムの根幹の何割かを担っているのは、今でもこの時に開発されたTRONであると言われている。

このTRONはいくつか開発の種類が予定されていたもので、特にコンピューターでの事務処理向けのOS、「B-TRON(Business-TRON)」の開発事業は、当時のMicrosoftやアメリカ産業界にとってはおそらく歓迎できるものではなかったようだね。日米貿易摩擦などの様々な要因や、真偽は別として、妨害工作が行われたりするなどしたらしく、結果的としてこのB-TRON計画は教育機関の標準OSとしても不採用へ追い込まれ、大きなシェアを得ることはなかった、という話だ。

僕はこのTRONは、国際標準規格を目指して作られたオープンソースのソフトウェアであるというところが、今日のユビキタス社会を形成するに当たって非常に大きな貢献をしたと思っている。

今頃、Microsoft以外のOSがシェアを大きくするか?と疑問に思う人間もいるかもしれないけれど、Microsoftの弱点があるとすれば、Office製品やWindows OSがすでに世界インフラのレベルのものになってしまったということだね。Googleもそうだが、一企業だけがこれほどのインフラレベルまで成長すると、必ず何らかの規制が入る。Xもしかり、SNSでさえ情報統制の波が押し寄せようとしている。こういう政府vs企業と利得者の構図は、至る所で発生してきた。

日本と欧米の違いは、独占した資源にするのか、それとも共有し、公共の発展に寄与するのか、という発想の違いにも現れている。基本的に企業というのは利益追求をするものだ、というのは間違ってはいないが、TRONのように技術を公開することで何がいいかというと、いいものはみんなが使い、富が一極集中で独占されずに分配・再生産される元になっているということだ。最初から公共のものになっているものは、国が規制を入れる前に、誰か一人の利益追求を大前提にしないために、最初から多くの企業が規格制定に参加していたりして、慎重に検討されている。これは仕組み的には、日本の神道が表す民主政治の概念にとてもよく似ているんだ。広く知られている一番古い民主政治の形は、皆が話し合い投票するという直接民主主義だが、オープンソースソフトウェアの理念というのは、公共に資する、という目的もあるから、そういう自治が働くのかもしれない。

さて、TRONのような、ハードウェアを制御するカーネルOSレベルから作られたような、日本生まれのOSが再び現れる可能性があるとしたら、僕はいくつかの条件があると思っている。

ひとつは、Microsoft一強の時代が終わること。もうひとつは、現在のAIの限界点が訪れること。

Microsoftの地位は盤石なものに思えるかもしれないが、それはエネルギー保証がドルの貨幣価値によって裏付けられているからだ。あの規模のデータセンターをこれからの経済崩壊で支えるには、いったいどれだけのドルと貨幣の信用が必要なんだろうね。皆、考えてみてほしいんだけど、今のGAMAMってみんなアメリカが本社だから、アメリカが沈むと一気に崩れる可能性もまあまあ考えられるんだよ。対策をしていないとは思わないが、これから始まる世界経済の崩壊で経済条件は一斉に書き換わる。その時、Windows OSや関連サービスが安定的に供給される保証はあるだろうか……? そういう意味で、会長が言っていたように全てのアメリカ発のサイバーインフラ文明が、一度ある意味の滅びを迎える可能性は大きい。そこに日本のチャンスがある。

また、AIは今、人々の様々な生活に浸透しようとする過渡期にある。その一方で、規制が進んでいる分野でもある。だが、今以上のレベルにまでAIを発展・進化させるには、いま一度のテクニカル・ブレークスルーが必要だ。極小化・立体化による集積で回路の数を揃えるだけでは、らちがあかなくなるほど、サイバー空間の情報量は爆増していく。この情報量を一気に精度90%以上で処理できるような、情報処理のためのハード設計が待たれるところだね。ここを突破するのは、おそらく日本人でなければ無理だ、と僕は付け加えておく。

AIは電力も食うしね……。